
2017年に東京で創業されたGreeneryは、ハーバリウム(植物標本)のパイオニア的な商品であるフラワリウムなどの企画・製造・販売を行っている。
創業者である興津理絵さんは、”生きる”ということの探究を人生のテーマにしている。
そんな興津さんがGreeneryを起業するに至った原体験と、その原体験が生み出したモノづくりへの純粋な想いを届けたい。

想いを軸に進む道を変える
興津さんは元々、医療の道に進んでいた。
「医療の道に進むことになったきっかけは、姉が先天的な難病で25歳という若さで亡くなったことでした。治せない病気もあることを実感したこともあり、予防医学の道に進むことにしました。なので医学部卒業後は、基礎研究に携わる仕事をしていました」」
研究を続けている中で、興津さんはあることに気づいたという。
「くも膜下出血を患い話すことができない患者さんが、桜を見て『さくら』って言ったんです。治ったわけではないし、エビデンスもないんですが、花が持つ”生きるパワー”は人に元気を与えるじゃないかと思ったんです」

こうした原体験が、興津さんの中にあった想いを加速させていく。
「以前は病院の一階に花屋がありましたが、今は土に含まれる細菌などの関係で無くなりました。だけど病室って無機質だし、病気で戦っている人ほど花の持つパワーが必要だと思ったんです」
そこで病室にも持ち込める形にしたのがフラワリウムだ。
「友人が入院している時に、自分で作ったフラワリウムを持っていきました。それをインスタにあげたら、予想以上に反響があって。花の持つ”生きるパワー”を必要としているのは、病気になった人だけではなく、もっとたくさんいるんじゃないかと思いました」

予防医学へ進むことになった根底にある想いとも重なり、Greeneryを起業することになった。
逆境でも大切なことはブラさない
起業後は想定していた以上のスピードで事業が進んでいった。
「フラワリウムが一気に流行った影響だと思うのですが、類似品が出回りましたね。大手企業さんも参入してきたのですが、私は一人でやっていたので本当に大変でした」
そんな中でも大切にしていることはブラさなかった。
「フラワリウムは人の手で作るモノだから、そこにはつくり手の精神が表われる。例えば、忙しくなると普段より少し雑になってしまったり。お金を稼ぐこと自体が目的ではないので、無理して数を得る必要もない。だから自分の目の届く範囲で、丁寧にやっていこうと思いました」
資金調達を打診されたこともあるが、興津さんのこうしたポリシーと合わなかったため、断ってきた。

「起業してから三年目くらいまでは、たくさん泣いてました。正直、辞めたいと思ったこともありますが、仕事を嫌いになったことは一度もないですね。花が持つ力を信じているし、”生きる”が人生の探究テーマなので」
このような”ブレないスタンス”が、とても興津さんらしいと感じた。
生きるパワーを丁寧に届けていく
そんなGreenery/興津さんの想いは、Greeneryのモノづくりに宿っている。
「一点目は自然素材である植物を扱うということです。花もそうですが、自然の持つエネルギーをダイレクトに提供したいから。そして二点目は、一つひとつ想いを込めて、人の手で作るということ」

こうした想いは、商品を通じて多くの人の心に届いている。
「フラワリウムを買ってくれるお客さまから『元気や癒しをもらえる』と言ってもらえることが多いんです。きっと、想いを込めて手作りで作ってるからこそ、私たちが届けたい想いがクリアに伝わってるんじゃないかと思うんです」
インタビュー中も終始穏やかにコミュニケーションしてくれていた興津さんだが、話している言葉はとても力強く、そして一貫していた。
そんなGreenery/興津さんが生み出すモノは、”生きるパワー”を社会に広げ、人の心を優しく包み込むモノなのだと思う。













