
2020年に兵庫県の多可町で設立された多可町地域商社RAKUは、行政と連携し、地域にいる事業者を巻き込みながら地方創生に取り組んでいる。
創業者の寺川敏博さんは、縁もゆかりもなかった多可町に移住し、自ら考え、そして動くことで”今”を創り出した。
そんな寺川さんと自社ブランドHALOPの立ち上げを進めてきた橘大地さん。二人が切り拓いた道とその奥にある想いを伝えたい。

違和感から芽生えた想い
寺川さんが起業するに至った原点は、新卒で入社した大手食品メーカーでの経験にある。
「営業やマーケティングの仕事をしていて、金額の大きな商談も多かったです。ただ、自分たちの商品の原料となる素材が、どこで、どんな想いで作られているのかを知ることができなかった。そこにずっと違和感がありました」
その違和感は、仕事を続ける中でより強くなっていった。
「営業先のバイヤーさんから『おいしいものを作るのではなく、売れるものを作ってほしい』と言われることもありました。でもその先にあるのは、価格でしか評価されない社会。それは面白くないと思ったんです」
約3年間勤めた大手食品メーカーを退職。
「想いのある事業者さんやその人たちが作っている素材が、地域にたくさん眠っている。だったら、どこかに移住して町起こしをしたいと思いました」
そうして辿り着いたのが、多可町だった。

自ら未来を切り拓く
地域への強い想いを胸に移住した寺川さんだが、最初から思い描いた活動ができたわけではなかった。
「最初は、地域のいろいろなモノを扱う仕事はさせてもらえず、ずっとレストランで配膳をしていました。役場の方と口論になることも多かったですね(笑)」
転機が訪れたのは、移住から3ヶ月ほど経った頃だった。
「『事業者さんに会いに行っていいよ』と言われたんです」
そこから、状況は少しずつ動き出す。
「元々勉強していた中小企業診断士の知識を生かして、地域の事業者さんの経営の相談にのることから始めました。それを続けて半年経過した時から、事業者さんの反応が良くなってきたんです」
事業者からの評価が役場へ伝わり、新たな仕事を任されることになった。
「町が作った任意団体の豆腐の製造施設があったのですが、ずっと赤字だったんです。そこの再建を依頼されました。地域のモノを扱う地域商社という役割の会社にすることを条件に、引き受けました」
こうして設立されたのが、”今”の多可町地域商社RAKUである。

「地域が賑わうような拠点を作り、地方創生を行いたい。自治体の補助金でやっている会社が多いのですが、多可町地域商社RAKUは自分たちの売上で地方創生を進めています」
そのために、何か自社の商品を開発できないかと考えていた時に、橘さんと出会った。
強みに目を向け、活かす
橘さんは大阪で5年間、縫製の仕事をしていた。

「商品を企画したりすることはなく、淡々と縫製をしていました。ただ、このままではダメだと思ったんです」
環境を変えるため、移住相談サイトに登録。
そこで寺川さんと出会い、多可町への移住を決めた。
「多可町には杉原紙という歴史のある和紙があります。初めて見た時にミシンが通りそうだと思いました」
この直感が自社ブランド「HALOP」の着想となる。
「和紙は、もともと文字を書くための素材でした。昔はそれでよかったんですが、今はそれだけでは厳しい。だから和紙の強みである『軽さや丈夫さ』を生かして、ポーチやバッグなどを作ることにしました。デザインも和のテイストになりすぎないようにしています」

和紙の強みに目を向け、和紙の価値をリメイクした二人だからこそ「HALOP」を通じて届けたい想いがある。
「HALOPを使ってくれるお客さまに、自分の強みに目を向け、活かすことの大切さが伝わると嬉しいです」
それぞれが抱えていた想いと決意をもとに、縁もゆかりもない場所で”今”を切り開いた寺川さんと橘さん。
そんな二人の地域への想いは、これからも決して揺らぐことはないだろう。







